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2017年7月 3日 (月)

空き家対策(前編)

年々増えていると感じる空き家。治安や景観、災害、生活環境への影響など、さまざまな観点から不安が募ります。

今回はそんな空き家の対策について考えてみたいと思います。

【空き家は増えている?】

みなさんがお住まいになっているご近所でも、空き家が目立つようになっているかもしれません。

空き家は実際増えているのでしょうか?

最新の調査は平成25年の住宅・土地統計調査。全国では、平成20年と比べ、空家数は63万戸増え、820万戸へ、すべての住宅数に占める空き家の割合(空家率)は13.1%から13.5%へと増えています。
群馬県では、同じ調査で空家数が2万7千戸増の15万1百戸増加、空家率は14.4%から16.6%へ。
太田市では、空家数が2,410戸増の15,510戸、空家率が15.0%から16.1%へ増加しています。

全国的にも空家は増えていますが、群馬県、太田市での増加率は全国平均以上というわけです。

もちろん、人口が減りつつあるわけですから、必要な住まいの数も減っても不思議はありません。しかし実のところ、人口は減ってきていますが、世帯数はまだ減っておらず、先ほどの統計によれば世帯数は5年前より248万世帯(5.0%)増加しています。それでも、総住宅戸数も304万戸(5.3%)増えているので、空き家も増えているのです。

下の表は、都道府県別の1世帯当たりの住宅数と空家率の比較を示したものです。さきほどの平成25年住宅・土地統計調査から作成しました。

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ご覧いただくとわかるように、その地域の世帯の数に対し、住宅の数が多いほど、空家率も高くなっています。住宅が必要な人たちの数より、住宅の数が多ければ、空き家が増えるのは当たり前ですね^^;


空き家を増やさないためには、世帯の数を増やすか、住宅の総数を減らすかどちらかの方法しかないわけです。

【放置された危険な空き家の問題】

空き家が増えていること、世帯の数と比較して住宅の数が多すぎることが、空き家が増えている原因と考えられることがわかりました。それでは、空き家が増えることでどんな問題があるのでしょうか。

空き家が増えることの問題点は、大きく分けて二つあると思います。一つは、空き家がきちんと管理されていないことにより、周辺環境に悪影響を及ぼす、ということです。

こういった空き家の問題はここ10年くらいの間に議会などでもかなり取り上げられるようになり、危険な空き家などをなんとかできるように、制度の改正も行われました。

それが、平成27年5月から全面施行となった「空家等対策推進に関する特別措置法」です。

この法律により、市町村長は危険な空き家などを把握し、危険な状態でなくなるように、助言、指導、勧告を経て、所有者が従わない場合は命令を出し、さらには強制的に改善できるようになりました。

空き家の場合は所有者が不明の場合もあるわけですが、このような場合も所有者を探す努力をしても見つからない場合は所有者不明のまま、持ち主の代わりに改善することができます。

また、勧告以上に相当する場合は、その土地に建物があることで特別に税金が安くなる制度から外れ、更地の場合と同じ金額の税金を払わなければならないということになりました。さらに、相続した空き家等を一定期間内に譲渡した場合、その譲渡所得から3000万円が特別控除されるという制度も、平成31年までの時限立法で導入されました。

これで、空き家を放置しておくことにデメリットが発生し、処分した場合にメリットが生じるので、空き家をきちんと管理するなり、管理できない場合は譲渡するなりという対策を持ち主が取ることが促されるはずです。

それでも放置されている危険な空き家があれば、市町村長にお願いすれば、なんとかしてもらえるはずです。良かったですね!

と、ほっとするのはまだ早い。そういいつつも、放置された空き家は、あまり改善が進んでない感じがしますよね?

法律が施行になっておよそ2年、太田市ではこれまで、危険な空き家などを市が撤去するなどしたことはありません。

群馬県内でも、前橋市で昨年1件、下仁田町で今年1件実施されただけです。
全国的にみても、そのような事例はまだまだ少ないのです。

【放置されている空き家の対策はなぜ進まないのか】

ではなぜ、放置されている空き家の対策が進んでいないのでしょうか?

ごくごく簡単に言えば、お金がかかるからです。

そもそも空き家がどこにどれだけあるかはどうやって把握しているのでしょうか?

冒頭紹介した国の調査では、全国の21万単位区のおよそ350万戸を調査員が訪問するなどして確認しています。

空き家だけでも820万戸あるのですから、これはもちろん全部調べているわけではなくて、地域をわけて調査区を抽出し、調査したものから全体を推測しているのです。

この方法だと、この地域には何件くらい空き家があるはずだ、ということはわかっても、どこにあるどの家が空き家なのか、というのはわかりません。

それを調べるには、実際にその地域で一軒ずつ現地調査しなければならないわけです。

この調査によれば、太田市にある空き家総数15,510戸のうち、賃貸用や売却用、別荘などのセカンドハウスとして利用されているものなど以外の「その他の空き家」、その中でも腐朽や破損があり、危険性や周辺へ与える悪影響が高いとされる「特定空家等」が含まれていそうな一戸建ての空き家は1,560戸とされています。

太田市では、この法律ができる2年ほど前に、空き家対策の条例を作っていて、その際に区長さんたちに協力して頂いて、調査を行なっています。
その結果、市内には管理がきちんとされていない空き家が504件あったそうです。

太田市の空家等対策計画によれば、以前の制度で助言を297件、指導を89件、勧告を11件行うなどしており、昨年3月の時点でそのような空き家の数は約170件ほどとなっているということですが、空き家の数は固定されているわけではなく、常に新たにそのような状態になるものが発生し続けているわけなので、現状を把握し続けるためには、それなりの方法を考えなければなりませんし、もちろんそのための予算も必要です。

また、持ち主を特定し、連絡をとり、対策をしてもらえるよう交渉し…と考えただけでも頭が痛くなりそうなくらい大変な手間暇がかかります。

さらに勧告したり命令したりすると持ち主にとっては不利益を被ることになりますから、実際に行うのは決断力が必要です。

そのうえ強制執行することになれば、当然そのための費用もかかりますし、さらにはその費用を取り立てなければならないなど、次から次へと厄介な問題が出てくるのです。

ただでさえお金も人手もが足りなくなってきている市町村が、こういった面倒な問題に取り組むのは並大抵のことではありません。(後編に続く)

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